サッパリといただく
門前仲町駅から清澄通りを越中島方向へ進む。大横川の「くろふね橋」を渡り、 150 メートルほど先の左手に、「ひつじの新町や」が現れる。店内はL字型のカウンター 10 席、座敷は6人ほど座れるスペースだ。
一般的に羊肉は特有のクセがあり、よって苦手な人々も多いと思う。でも、「新町や」の羊肉をいただいたら、その憂いは払拭されるだろう。ご主人の故郷である信州の新町で飼育され、直送された羊肉は、ことのほか新鮮なのだ。
1人前 900 円の盛皿には、背ロース、脂背ロース、肩バラ、ヒレ、若干部位の異なるモモ2種と、脂モモ肉2種の全8種類(仕入れにより部位変更あり)。両面をサっと炙り、醤油ベースのつけダレに浸してパクリと頬張れば、軽やかな旨味が心地よく、
「ああ、羊肉って美味しいもんだな」
と実感できるだろ。また、脂身の多い肉は、やや長めに炙り、裏返してさっと炎があがり、火が消えかけたら食べごろだ。塩コショウ、岩塩、ガーリック塩、好みの塩をちょいとつけていただけば、サッパリとした脂が口中を優しく穢してくれる。これが旨いんだな。その他、ワイン漬けの羊肉もまた美味で、フレンチマスタード醤油とベストマッチである。
オープンから3年半、噂は口コミで広がり連夜賑わっている。よって入れないこともあるので、当日、電話で確認したほうがベターだろう。
「子供の頃、祖父に連れられて、映画を見た帰りに、羊をよく食べたんだよね。あれが忘れられなくて、いつか焼肉スタイルの信州産の羊肉専門店をやりたいって思ってたのよ」
と「ゴダイゴ」のタケカワユキヒデ似の小林氏。実に穏やかな人柄で、焼き方を丁寧に面倒見てくれる。
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その日の仕入れによって部位が変わる「盛り合わせ」(1人前¥ 900 ・写真は2人前)は野菜つき。どの肉も生で食べられるほど新鮮なのだ。 | 噛み締めた瞬間、口の中でワインが香る「赤ワイン漬け」(¥ 900 )。 |
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〆に食べる客も多いという「羊肉の味噌煮込み」(¥ 600 )は肉の旨味が溶け込んだ逸品。 | 肉の部位や焼き方を丁寧に説明してくれる小林氏。料理に対して並々ならぬ熱意をもち、仕入れた肉質に納得がいかない場合は臨時休業とすることも。 |
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カウンターを中心とした店内。小林氏の人柄をあわらすようなアットホームな雰囲気となっている。 |