創業110年あまりの老舗料理屋
食べ馴れていないせいもあり、どじょうを敬遠する人も多いと思うが、それは単なる食わず嫌いではないか。方々のどじょう専門店を食べ歩いたけど「飯田屋」は格別なのだ。
訪れると決まっていただくのが「丸鍋」(どぜう鍋)。所謂どじょうを丸ごと煮た鍋であるが、これがたまらない。タップリのネギを散らし、グツグツと煮えたところで食らいつくのだ。柔らかな身と骨、ちょいと甘辛い割り下とどじょうの旨味が十二分に沁みた、ささがきゴボウのなんとも美味しいこと。途中、山椒を振れば2度楽しめる。これで酒をクィっと一杯、また、ご飯をいただいてもいいだろう。
「うちのどじょうは、主に青森、栃木、茨城の天然物で、そのつど状態のいいものを仕入れているんです」
と4代目のご主人、飯田龍生氏。江戸の終わりごろの創業で、その当時は飯屋を営んでいが、明治 35 年頃からどじょう料理を始めたそうなのだ。
「骨まで柔らかくするのって手間がかかるものなんですよね」
「ええ、どじょうの骨は固いので。まあ、どこもそうですが、柔らかくするのにはいろいろな工夫があるんですが、その調理法は内緒ですけど」
うーん、その秘密が聞きたかった。穏やかな主人の人柄、従業員皆さんの接客の心配りも見事。長らく営まれてきた老舗料理屋の所以である。
2間ほどの大暖簾をくぐると、広々とした1階座敷は 40 席、2階は 60 席に個室が1室あり、裏手にある別館にも 40 席のスペースがある。1番人気は「ほねぬき鍋」、次に「丸鍋」(どぜう鍋)、「柳川鍋」だそうである。また、「どぜう汁」これも美味。濃厚にしてサッパリとした味わいで、ランチに定食を 600 円で提供しているのでお勧めである。そうそう、通に人気のある「玉子丼」もぜひ試してもらいたい。
「誰かいい人がいれば、と思ってるんですがね……」
現在、店で修行されている5代目、唯之さんの嫁を心配する主人、親としての人情でもある。「飯田屋」の味を絶やさぬよう、誰か候補がいれば。ちなみに彼は 25 歳、端境期初々しい青年である。
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たっぷりのネギでいただく「どぜう鍋」(¥ 1400 ・写真は2人前)。骨まで丸ごといただけるので通称「丸鍋」とも。 | 平日 15 時までオーダーできる「どぜう汁定食」(¥ 600 )は濃厚な「どぜう汁」とご飯(お替わり自由)、小鉢、お新香が楽しめる。 |
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代々引き継がれた秘伝のタレが香る「どぜう蒲焼」(¥ 1600 )。 | 5代目の飯田唯之氏。笑顔の爽やかな未来の店主は、ベテランの職人やホールのお姉さん方について日々勉強中。 |
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「どぜう飯田屋」の千社札があしらわれた携帯用の歯間ブラシは特別製。「“鳥肌”を見た ! 」のひと言でプレゼントしていただけるとのこと。 | 趣きのある店内は大人数にも対応できる。 |