最後の一滴まで飲み干してしまうスープの底力
ご夫婦で切り盛りされる店内へ足を踏み入れると、実に気持ちのいい対応で迎えてくれる。店名の由来は「“広”く“皆”様に“望”まれる店になるように」との願いをからだとか、接客にその心があらわれている。
2001年10月のオープンから、味の評判が口コミで広がり、昼夜問わず行列する人気ぶりである。店主は方々の店を食べ歩き、独学でこのラーメンを作り上げた。豚骨、鶏ガラ、煮干など、その日のスープの状態に合わせて、魚介の乾物の配合を調整するそうだ。目指すラーメンの味わいは「毎日食べられる、飽きないラーメン」が理想。
そのラーメンを一口すすると若干塩気は控えめだが、ジワジワと深いうまみが口中に広がり、なめらかな中太のストレート麺が喉元を心地よくさせてくれる。歯ごたえの確かなちょいと大きめなメンマ、肉厚な肩ロースの焼豚もほどよい柔らかさで、どれをとっても隙がない。いつの間にか最後の一滴までスープを飲み干してしまう底力が潜んだ味わいだ。
気持ちのいい接客もさることながら、美味しいものをこしらえたいという主人の真摯な執念が、客を足しげく通わせているのだ。
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シンプルな見た目ながら深みのある味わいがクセになる「らーめん」(¥ 600 )。トッピングは「味付茹でたまご」(¥ 100 )が人気だとか。 |
平日は 17:30 から夜の部も営業しているが、人気店ゆえ1時間あまりで売り切れとなる。時間的に不安な場合は電話で確認を。土日も行列は絶えないので、来店は平日の午後がおすすめ。
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: DATA :
【こうかいぼう】
住所:東京都江東区深川2-13-10
東京メトロ東西線・都営大江戸線門前仲町駅より徒歩6分
電話:03-5620-4777
営業時間:平日11:00〜15:00
17:30〜売り切れまで
土日祝11:00〜15:00
定休日:第1第3日・毎週水
席数:15席
★シチュエーションPOINT
「直帰の午後はうまいもんへ直行!」
時間を忘れる和み感が心地よい
日本酒評論家、フードコーディネーター、デザイン会社の社長と4人で、なぜか門前仲町で打ち合わせすることになった。「深川不動尊」の前で待ち合わせをして、適当な店に飛び込んだのだが、
「この店なんか落ち着かないよな?」
「俺もそう思ってたんだよ」
とさっさと店を出て、町を徘徊。
「この店の佇まいはいいね」
と飛び込んだのが「多幸坊」だった。
店内左手に厨房を囲むようにカウンター7席は満杯、右手にテーブル4人席が1卓だけ空いていてそこに収まった。メニューを眺めればその品数 40ほどだろうか、腹が減っていたので刺身の盛り合わせなど、5品ほど注文して、日本酒をやりながら打ち合わせを始めた。
「ここの刺身うまいな」
「イカワタ焼き食べてみな、これもいいぞ」
話し合いも適当に、誰もが黙々とつまみに無心に食いつく。大衆割烹だが、中華、洋風のメニューもちょいと揃え、フランスパンが添えられた「はまぐりオリジナルにんにくソース」も乙な味わいだった。客層は近隣のサラリーマンでガヤガヤと賑わい、時間が経つのを忘れてしまう和み感が漂う心地よい店なのだ。日本酒評論家がニコニコしながら、
「俺たちって店を見つける嗅覚が鋭いね」
と自画自賛。便乗すれば、伊達に食べ物の物書きを生業にしちゃいないのだ。
日本酒を飲まなければ1人予算 3000円以内。伺えば店主の実家がマグロ問屋を営んでいるため、希少な部位を含めた良質なマグロが味わえるそうなのだ。
数週間後、デザイン会社の社長と2人で「多幸坊」を訪れたら満席。仕方なく適当な店で時間をつぶし、9時ぐらいに再訪して閉店まで飲んだくれていた。

: DATA :
【多幸坊】
住所:東京都江東区富岡1-4-13
東京メトロ東西線・都営大江戸線門前仲町駅より徒歩3分
電話:03-3642-7224
営業時間:17:00〜23:30(L.O 23:00)
定休日:日祝
席数:21席
★シチュエーションPOINT
「たまには上司と飲みにケーション」