JR赤羽駅東口から徒歩8分。「志茂平和通り」という、1台クルマが通れるほどの小さな商店街に、天ぷら専門店「天富士」がある。ご夫婦で切り盛りされている店内は、右手にコの字型のカウンター6席、4人席のテーブル2卓のスペース。
ここのランチの「天丼」、「天ぷら定食(昼の定食には、かき揚げは付きません)」とも、破格の 900 円には頭が下がる。それも文句なしの美味しさだ。
「土地柄、これ以上値段が上げられないんですよ」
と店主の小野田氏。彼は銀行員を経て、銀座の名店「天一」で修業の後に、昭和 56 年、地元赤羽に店を構えた。僕もいろいろな天ぷら屋を巡っているが、銀座、赤坂、新橋の有名どころと、なんの遜色もない美味しい天ぷらが、ちょいと町外れの場所でいただけるとは思ってもいなかった。
夜の天ぷら定食は、海老、魚(今の時期ならメゴチ、日によってキス、鮎など)ナス、季節の野菜、かき揚げ、ご飯、ちょいとボリュームの香の物、赤だしが付いて、 1050 円とは驚かされる。カウンターでいただけば、揚げ立てがサーブされ、熱の入り方が絶妙な素材が生かされた天ぷらのほどよいサクサク感、嫌味な甘さが抑えられ、旨味の充実した天つゆも実に按配がいい。腹に余裕があれば、〆はご飯をお代わりして、その上に丼ツユに浸したかき揚げを乗せてもらい、ミニ天丼でフィニッシュ、2度も楽しめるすばらしさだ。
天ぷらが食べたくて北関東から都心へ行くなら、池袋、上野にわざわざ行く必要はない。赤羽の駅からちょいと歩くけど、「天富士」の天ぷらを食べれば納得してもらえるはず。ビールや白ワインを飲みながら、お任せで天ぷらをいただいても、一人予算 5000 円以内で収まるので、是非利用してもらいたい。旨いぞ。
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定食類はご飯のお替り無料。写真は「天ぷら定食」( \1050 )。カウンターに座れば揚げたての天ぷらが、順次サーブされていく。 | 定食の最後に提供されるかき揚げによるミニ天丼。湯せんした丼タレをくぐらせるので、水っぽくならず、サクサクのままいただける。 |
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店主の小野田氏。「天一」修行時代は専門誌に載ったほどの職人である。 | 店頭には持ち帰り用の販売スペースも。「天ぷら盛り合わせ」( \750 )や「天丼弁当」( \840 )が人気。 |