
「体に優しい」鶏のカレーライス
「体に優しい食べ物」なんていう謳い文句が巷の料理屋に氾濫している。喜ばしいことなのだが、でも、そんな店に限って美味しかったためしがない。それは、ヒステリックにいい食材、無添加調味料ばかりに気を取られ、また、技術が伴っていないからに他ならない。
しかし、ちゃんとした店はあるものだ。「 cafe ZINC 」の「鶏のカレーライス」をいただいたとき、まさに「体に優しい食べ物」を実感させられた。そのカレーはちょいと塩加減に物足りなさを感じるが、食べ終わる頃にいい塩梅になるよう計算されている。嫌味じゃない仄かな甘み、バランスの取れたスパイスの配合、美しくデコレートされた大きめな具それぞれの個性が生かされ、特に鶏肉をいただいたとき、肉を実感させながら、カレーソースと一体になった程よい歯触りに技を感じ、さらに不純物のない潔い味わいに驚いた。
「長年飲食業界に携わり、多くの店でウソを見てきたんですよ。化学調味料不使用、なんて言いながらしっかり添加されていたり、国産野菜と言いながら外国産だったり……。お客様は出されたものを信じて食べるしかないんですよね。僕はウソのないまじめなお店を作りたいっていつも思っていたんです」
と店主の大野氏。そんな思いから、満を持して 2003 年にオープンさせた。
そのカレーの仕込みには手間隙がかかっている。ジャガイモ、ニンジンなどの野菜は1度自家製ブイヨンで下煮。小麦粉、バターを使用しないカレーソースは、その元になるタマネギを軽く炒め、独自にブレンドしたスパイス、自家製カレー粉などで仕上げている。また具の鶏肉は、ヨーグルト、カレー粉、塩、オイルなどをブレンドしたマリネ液に1週間ほど漬け込んだものだ。このひと手間、そして主人の「美味しいものを食べさせたい」という心が、カレーを美味しくしているのだろう。カレーのメニューは羊、野菜もあり、その他、無添加パン・サラダ・玉子・野菜シチュー・肉料理・魚料理がワンプレートにデコレートされた「パンプレート」も人気である。
実はこの店、店内の壁面は 4週間〜1ヶ月半ほどで作品が入れ替わるギャラリーカフェなのだ。アーティストにスペースを無料で提供する代わりに、店のメニューを作ってもらうちょいと変わったシステムで、故に、訪れる度に店の雰囲気やメニューが様変わりする。そのクリエイティブな空間で、 「体に優しい食べ物」を是非実感してもらいたい。![]() |
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大ぶりな野菜と鶏肉が美しくデコレートされた「鶏のカレーライス」(¥ 1155 )。胃にもたれることがないため、遅めの時間に頂いても胃がもたれないと評判だとか(カレーライス、パンプレートともに数量限定)。 | 展示作品によって表情を変える店内には、写真集をはじめ多くの書籍、雑誌が。ブックカフェとしての機能も備えるほか、アコースティックライブも不定期に開催されるマルチな店である。 |