年末特別企画
2007.11月 File.01

07/12/19発売!

 

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photo by Shigeki Watanabe

香辛料だけで作ったカレーが衝撃的だった

小野:カレーを食べ歩くようになったきっかけは何だった ?

島津:もともと家庭のカレーが好きだったんですけど、大学1年の時に初めてインドカレーを食べたんです。そこで「こういうものもあるんだ」と興味を持ったんですね。実際に食べ歩くようになったのは、授業やサークル活動がひと段落した大学3年の頃からですが。

小野:それって何年前 ?

島津: 10 年前ですね。当時『ぴあ』から“ランキン '  グルメ”と題して、読者投票をもとに1位から 100 位までお店を紹介していくガイド本シリーズが出ていたんです。

小宮山:ん〜、あったあった。

小野員裕(おの かずひろ)
1959年、北海道に生まれ、東京で育つ。文筆家、出張コック、フードプロデューサー。横濱カレーミュージアム初代名誉館長。 鉄の胃袋を武器に放浪先の大衆食堂、大衆酒場に足繁く出入りするかたわら、カレー伝道者としてカレーの醍醐味についての 布教を地道に続けている。著書に『東京カレー食べつくしガイド104/380店』(講談社)、『週末はカレー日和』(ぴいぷる社)、 『週末は鍋奉行レシピで』(創森社)、『立ち飲み酒』(共同執筆、創森社)、『魂のラーメン』(プレジデンド社)、『ラーメンのある町へ』 (新潮社)、『カレー放浪記』(創森社)など

島津:その“カレー編”をお手本にして食べ歩いていました。その後に小野さんの『東京カレー食べつくしガイド 104 / 380 店』に出会いまして、さらに食べ歩きましたね。

小野:小宮山君は ?

小宮山:僕は高田馬場にある 夢民 がきっかけです。高校生の頃通っていたピアノの先生が、高田馬場に住んでいたんです。当時の 夢民 は今の場所とは違って。

小野:ラーメン屋の えぞ菊 の隣だね。

小宮山:その2軒がすごい行列だったんですよ。あの頃は今ほどラーメンブームやカレーブームではなかったので、昼時になると出現するその行列がとても不思議だったんです。ずっと気になっていて、「なんでなんだろう ? 」と思いながら食べたら美味しかった。そこからカレーを意識して食べ歩くようになりましたね。

小野:島津君のようなお手本は ?

小宮山:同じく『東京カレー食べつくしガイド 104 / 380 店』ですね。カレーに関する本をきちんと読んだのは、これが初めてでした。この本の情報を頼りにいろんなお店に行くようになって。だから小野さんは師匠です。

小野:ありがとうございます ( 笑 ) 。

小宮山:この本はじつに乱暴な文章で書かれていて、だからこそ信用できたんです。

小野: ( 笑 )

島津:「某店の欧風カレーはダメだ ! 」とか。

小宮山:「これは面白い ! 」と思いましたね。

小野:あれはバッシングされたんだよ ( 笑 ) 。僕のきっかけは ボルツ の 20 倍カレー。高校の時に同級生8人と食べに行ったんだけど、4人しか完食できなかった。食べた4人のうち2人の腰が立たなくなって、そいつらを担いで帰ったんだよ。そして彼らは次の日学校にこなかった。

小宮山・島津: ( 爆笑 )

小野:僕もジョッキで水を4杯ぐらい飲みながらやっと食べたんだけど、家庭とは違う、香辛料だけで作ったカレーが衝撃的だったんだよね。「こんなにスパイスの香りが鋭いカレーがあるんだ」と思った。それからだよね。

1日3食のうち、1食はカレーを食べている

小宮山雄飛(こみやま ゆうひ)
ホフディラン(vo、key)
96年にシングル『スマイル』でメジャー・デビュー。 02年に活動休止するも06年9月に、日比谷野外大音楽堂での"SET YOU FREE"で電撃復活。 NEWシングル『カミさまカミサマホトケさま』をリリース。

小野:島津君は本当に食べ歩いているよね。日本全国で考えても五本の指に入るでしょ。最近お店を調べてると、なんだかんだで行き着くのは君のブログだから。

小宮山:すごいですよね。どれぐらいのペースで食べてるの ?

島津:新規のお店は百数十軒ぐらいだと思います。それ以外にもこれまで食べてきたお店に行きますし。

小宮山:年間で ?  3日に1回は新しい店に入ってるってこと ?

島津:そうですね。

小野:それはすごい。これまでに開拓してきた店にも行くなら、1日3食のうち1食はカレーを食べてるんじゃない ?

島津:そうなる確率がかなり高いですね。

小野:カレー本を書いていた時期は昼も夜もカレーを食べてたけど、今は洋食屋とか居酒屋とかも行くからなぁ。

島津:1日で4、5軒ぐらいまわられてましたもんね。

小宮山:おふたりに比べたら全然少ないんですけど、僕は集中的に食べますね。1週間毎日カレーとか。

小野:そういう時期があるの ?

小宮山:ブログをやっているので、そのネタとしても「今週は毎日カレーを食べてみよう」というのは面白いかなと。わりと影響されやすいので、本やテレビでカレーの特集を見ると「あ〜、食べたいな〜」ってすぐに思いますし。

女性を連れて行くからには雰囲気がいい店

島津:普段おひとりで食べ歩かれているぶん、カレーは“ひとりで食べるもの”というイメージがあるかもしれないんですけど、あえて女性と一緒に行くとしたらどこがオススメですか?

小野:デートってことだよね。僕は日暮里の ダージリン かな。

島津:小物とかにも気を遣っている店ですよね。

小野:そう、雰囲気がいい。店のデコレーションやレイアウトもキレイだし、カッコいい店だよ。

島津:“おひとりさま女子”も結構いますよ。

小野:あとは押上の SPICE cafe (スパイスカフェ) もいいのかな。

島津:コースで「前菜の5種盛り」が出てきたり、小技が効いてますよね。

小野:そうそう、トータルでいい店なんだよね。

島津忠承(しまづ ただつぐ)
1976年埼玉県生まれ。東京のカレーが食べられるお店を500軒以上紹介しているブログ「お気に入りのカレー屋さん500」の作者。雑誌編集の合間にカレーを食べ歩いている。これまでにインド、イギリス、イスラエルなど世界15カ国で600軒あまりのお店を探訪してきた。将来の夢は東京からロンドンまで飛行機に乗らずに旅行し、途上のすべての国でカレーを食べること。好きな言葉は、中国の政治家であるケ小平が発言したことで有名になった「不管K猫白猫、抓住老鼠就是好猫」(白猫であれ黒猫であれ、ネズミを捕るのが良い猫だ)。インド風であれ日本風であれ、おいしければみな良いカレーだと思っている。

島津:店主は横浜のインド料理店で修行を積んだそうなので、南インド系のメニューがいいですよ。

小野:あとは一橋学園の マ・メゾン 。ここは洋食屋なんだけど「ご隠居カレー」っていう面白いカレーも出しているし、一軒家レストランだから雰囲気もいいんだよね。やっぱり女性を連れて行くからには、雰囲気がいい店ということで。

小宮山:僕は NATARAJ (ナタラジ) ですね。

小野:銀座の ?

小宮山:いや、いくつか店舗がある中でも南青山店ですね。まず女性はこういう場所に弱いかなと ( 笑 ) 。

島津:確かに。

小宮山:ベジタリアンカレーなので、ヘルシーですし。そういうイメージも女性に喜ばれそうじゃないですか。

小野:でもあそこはイメージだけじゃなくて、普通に美味しいよ。日本の麩のようなグルテンを肉風に食べさせるのも面白い。

小宮山:あとは札幌の Magic Spice (マジックスパイス) ですね。

小野:北海道まで行くの ?  いや〜、それは思いつかなかった。

小宮山:やっぱりデートですから。とは言っても、何かのついでですよ。たとえば北海道に彼女と旅行に行くとするじゃないですか。ジンギスカンばっかり食べていても飽きますよね。そんな時に「俺、いい店知ってるよ」と。

小野・島津: ( 笑 )

小宮山:あの店は札幌からちょっと離れてるんですよ。車で 20 分か 30 分くらいかかる。そこに移動するのも、ちょっといい感じのデートだと思うんですよね。今は東京にも出店しているので驚きは少ないかもしれないですけど、せっかく札幌まで行ったんならジンギスカンだけで終わるよりはね。あくまで北海道旅行ありきですけど。

小野:あの外観も意表をつくしね。

小宮山:あとは神保町の 七條

小野:あそこは何を食べても旨い洋食屋だ。

島津:エビフライが有名ですよね。

小宮山:そうそう。だから片方がエビフライ、片方がカレーを頼んでシェアしてもいい。それに昼間は雑居ビルにある街の洋食屋といったイメージしかないんだけど、夜は本格フレンチを出すそうなんですよ。そういったことも説明すれば、彼女も納得するかなと。

島津:ウンチクですね、ウンチク ( 笑 ) 。

小宮山:そうそう、「単なるカレー屋じゃないぞ」って。

“正装カレー”、それもまた美味

島津:すごくストーリーができあがってますね。僕のオススメは東銀座の 樹の花 です。ここはごく普通の喫茶店なんですけど、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが最後に来日した際、お忍びの散歩中にたまたま立ち寄ったそうなんですよ。その時お店は開店4日目だったのでほかにお客もなく、2人は誰にも邪魔されずに楽しいひと時を過ごしたというエピソードがありまして。

小野:考えてるな〜。

島津:「そんな風に一緒にいい時間を過ごせるといいね」なんてことを話しつつ。当時のメニューにはなかったそうなんですが、今は「豆カレー」を出しています。小麦粉を使っていないインド風カレーです。量はちょっと少ないんですけど、コーヒーも飲みながらゆったりと過ごすにはいいと思いますよ。あとは富ヶ谷の Restaurant TAKE (レストランタケ) もいいですね。

小宮山:1年ぐらい前にできたフレンチカレーの店だ。

島津:気の利いたビストロという感じで、オシャレではあるんですけど気取ってないんです。品のいい老夫婦がフレンチをつまみつつ、〆にカレーを食べていたり。

小野:味は ?

島津:欧風ですけど甘みはそんなに強くありません。酸味が強くて濃厚ですね。「カツカレー」も「カツレツ」という感じでキレイに揚げてくれるので、食べごたえがあります。

小野:そうなんだ。

島津:最後は表参道の SITAARA (シターラ) です。ここはインドの高級ホテルチェーンのオーナーが食べている料理を出しているんです。彼らの専属シェフが作っている料理を、そのまま日本に持ってきたんですね。内装もすごく凝っていますし、ワインと一緒にカレーを楽しむのもいいんじゃないかなと。

小宮山:でも極端に高いよね。

小野:高い。

島津:トータルで考えれば1人 5000 円はしますね。記念日用ということで。

小野:2人とも代官山の 小川軒 は行った ?

小宮山:僕は行ってないです。

小野:ここも高いけどめちゃくちゃ旨いよ。「よくこんなの作ったなー」って思った。

小宮山:カレーでいくらぐらいですか ?

島津: 2500 円ぐらいですよね。

小野:でもその格好じゃ入れないよ、ジャケット着ていかないと。もともとがフランス料理店だからね。前に汚い格好で行ったら「すみません、満席でございます」って言われたんだよ。

島津:僕はスーツを着て行っても「ご予約はお入れですか ? 」って聞かれましたよ。

小野:あの時アロハで行ったからな〜。

小宮山:ハワイでは正装なんですけどね ( 笑 ) 。

「第2回へつづく…」

 


: 店舗DATA :

夢民
東京都新宿区大久保 3-13-1
03-3203-3306

【ボルツ神田店】
東京都千代田区神田錦町 3-17
03-3233-3067

【ダージリン日暮里店】
東京都荒川区西日暮里 3-10-3-2F
03-5685-0267

【 SPICE cafe 】
東京都墨田区文花 1-6-10
03-3613-4020

【マ・メゾン】
東京都小平市上水本町 2-18-27
042-324-1255

【 NATARAJ 南青山店】
東京都港区南青山 2-22-19-B1F
03-5474-0510

【 Magic Spice 札幌店】
北海道札幌市白石区本郷通 8 丁目南 6-2
011-864-8800

【七條】
東京都千代田区一ツ橋 2-3-1 小学館ビル B1F
03-3230-4875

【樹の花】
東京都中央区銀座 4-13-1
03-3543-5280

【 Restaurant TAKE 】
東京都渋谷区富ヶ谷 1-14-14
03-3467-9333

【 SITAARA 】
東京都港区南青山 5-7-17-B1F
03-5766-1702

【小川軒】
東京都渋谷区代官山町 10-13
03-3463-3809